外壁の重ね張りは何故だめなのですか?

外壁の二重張り(金属サイディング)は絶対にやってはいけないリフォーム工事なのですが、なかなかご理解いただけなく頭の痛いことです。

何故二重張りがいけないのかを説明した時には「なるほど、そうなんですか!」と納得したと思われるお客さんが、後になって「営業マンに強く勧められて・・・」と申し訳なさそうな顔をしながら弁解されることがよくあります。

もう一度、この件についてお話しします。

まず、物体は高いところから低いところへ移動するという原理があることを、もう一度思い出してほしいのです。
これは、水も空気もボールも同じです。

暖まった室内の空気は温度の低い部分へと流れていきます。

冬に、暖房の効いた部屋の空気は廻りの温度の低いところへと流れていきます。
天井裏や床下、そして外壁を通して外側へと流れる空気の流れがあります。

その流れに乗って、空気に含まれた水蒸気もいっしょに流れていきます。

断熱材が充填された天井裏や外壁や床の仕上げ材の裏側には、防湿層と呼ばれるビニールのシートを張って、水蒸気が断熱材に吸い込まれないようにしているのですが、100%、水蒸気を遮断できるわけではありません。
ごく微量の水蒸気は、外壁内の断熱材に吸い込まれてしまいます。

木造の建物は、湿気があると腐っていきますので、断熱材に吸い込まれた水蒸気は住宅にとっては大敵なんです。

湿度の高くなった空気は湿度の低い方へと流れていきますので、水蒸気を含んだ外壁内の空気は、乾燥して気温の低い外気の方へ流れていこうとします。

昭和56年頃から始まった通気層工法は、外壁材の裏側に外気が流れ込む層を作り、壁内部の水蒸気を外部に逃がしてしまおうという発想から始まった工法です。

ところが、ほとんどの通気層は胴縁材を使っていますので、15~18㎜の厚みで作られています。
以前、道立寒地建築研究所(現 北方建築総合研究所)の方とお話しをする機会があって、その時に通気層の厚みについて伺ったところ『30㎜はほしいですね』とおっしゃっていました。

つまり15~18㎜では、充分な上昇気流を作ることができないそうです。

試しに、風のない日に通気層の一番下、土台の水切り部分に“線香のけむり”をあてても、さっぱり昇っていきません。

*興味のある方はやってみて下さい。

通気層の厚みが少ないというのも原因でしょうが、窓廻りや軒天部分で、きちんと空気が流れるような施工をしていないことが原因とも考えられます。

木造住宅の耐久性能を高めるといわれて普及してきた通気層工法ですが、残念ながら思ったような効果があるのかどうかは多少疑問がある現状です。

通気層が充分に働いていないと、壁内部から放出されてくる水蒸気は、通気層内に滞留することもあれば、外壁材を通して外気に放出されていることもあります。

外壁材を通して水蒸気が外気へ放出される現象は、通気層工法以前の住宅でも同じです。

つまり、外壁材は呼吸をしている と考えてもらうと分かりやすいと思います。

このように、通気層工法で建てられた住宅でも、通気層が完璧な状態になっているとは言えない場合、そのような住宅の外壁の上に更に金属サイディングを張ることは、外壁材の呼吸を止めてしまう ことになるわけです。

呼吸が止まってしまうと、壁内部の水蒸気は逃げ場が無くなり、断熱材や構造部材に吸収されてしまいます。

すると・・・当然ですが、木材が腐ってしまうということになってしまうのです。

現在の住宅工法は、理論的には(机上では)50~70年の耐久性が期待できると言われています。
せっかくそのように造った住宅を、外壁を二重張りしたことによって、昔のように『25年目で建替えです』とならないようにしてほしいと思っています。

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